カスタマーハラスメント研修で組織としてのリスクを防ぐ(公認心理師監修)
目次
増え続けるカスタマーハラスメント
近年、顧客からの不当な要求や暴言に苦しむ従業員が増えています。これは「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれる問題であり、従業員の心身に大きな負担をかけ、場合によっては離職にもつながる深刻な問題です。
鉄道の窓口や市役所、病院の受付などでありえないくらいのクレームを担当者にぶつけている人を見かけます。聞いているこちらの方が辛くなりますが窓口の方は丁寧に応対していますね。
しかし、彼らにはかなりのストレスがかかっており心身へも影響しています。SPNジャーナルによる2023年のカスタマーハラスメント調査結果においても、約半数の方がメンタルやモチベーションに影響が出ていることがわかりました。
「きちんと対応してくれているから安心だ」というわけにはいかないことがわかりますね。
※組織が守る事が大事、株式会社ハートセラピーではカスハラをする人の心理~適切な対応法や予防方法のほか、すぐに使える「クレーム対応シート」も提供する「カスタマーハラスメント研修」を行っています。業界に合わせた内容にアレンジできます。
労災認定判断にて用いる「心理的負荷評価表」でも令和5年9月01日にカスタマーハラスメントについてが加わりました。(下記判断基準にて詳しく紹介します)もしも、クレーム対応をしている社員がメンタル不全に陥った際は、この基準に基づき、一層迅速・適正な労災補償を行っていくわけですが、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合は心理的負荷強度が「強」と判定され、仮に訴訟問題に発展した際は組織は責任を問われます。
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、ネット社会の発展により、顧客と従業員の距離が近くなり、以前よりも簡単に悪意のある言葉を投げかけられるようになっています。下記はSPNジャーナルの調査ですが、1年間にカスタマーハラスメントを受けた人は半数を超えています。
このような背景もあり、厚労省は労働施策総合推進法にカスハラ防止策を追加する改正を検討しています。企業に同様の義務を課すなどして従業員の保護を図り、具体的には、対応マニュアルの策定や相談窓口の設置などが想定されています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義は定まっておりませんが、厚生労働省の対策マニュアルにおいては以下のような行為がカスハラに該当するものだとされています。
顧客などからのクレーム・言動のうち、という外クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な者であって、当該手段・態様により、露言う同社の就業環境が害されるもの
カスタマーハラスメント(カスハラ)の判断基準と具体例
業界により各社が改めて基準を作成しておくことをお勧めしますが、厚生労働省が作成したマニュアルが示す判断基準は下記です。
株式会社ハートセラピーの研修ではマニュアルの解説を現場に即してわかりやすく、また対策・対応も実践しやすいようにお伝えしております。
顧客の要求内容に妥当性はあるか
顧客の主張に対してまずは、事実関係や因果関係を確認して自社に過失がないか、また根拠のある要求がされているかを確認、顧客の要求や主張が妥当かを判断します。
要求内容が妥当性を欠くものとしては、以下のものが挙げられます。
企業が提供している商品やサービスに瑕疵(かし)や過失が認められない場合
要求内容が企業の提供している商品やサービスとは無関係な内容である場合
クレームのすべてがカスハラではありません。
要求を実現するための手段や態様が社会通念に照らして相当な範囲か
長時間にわたるクレームや妥当性がある内容だとしても、伝え方が感情的、威圧的、人格否定などあれば相当な範囲ではなくなります。
具体的には以下のような行為がカスハラに該当します。
◆要求内容の妥当性にかかわらず不相当ととされる可能性が高いもの
- 身体的な攻撃(暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、中傷)
- 威圧的な言動
- 土下座の要求
- 継続的、執拗な言動
- 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
- 差別的な言動
- 性的な言動
- 従業員個人への攻撃、要求
◆要求内容の妥当性に照らして不相当ととされる場合があるもの
- 商品交換の要求
- 金銭補償の要求
- 謝罪の要求(土下座の要求を除く)
また厚生労働省の対策マニュアルでは、顧客と接する機会の多い企業12社へのヒアリングを通して収集したカスハラに該当する具体的な行為例は下記の通りです。
出典:厚生労働省公式サイト
このようなカスターマーハラスメントをどのように対処していけばよいか、記事にしてみましたので、こちらもぜひご覧ください。
カスタマーハラスメント対応法を学ぼう🔗
カスタマーハラスメント(カスハラ)の組織への影響
カスタマーハラスメントを放置した場合、組織には以下のような多大なリスクが生じる可能性があります。
カスタマーハラスメントによる生産性・収益の低下
カスハラ対応に時間を費やし、本来の業務に支障をきたし、結果として生産性や収益が低下するリスクがあります。
また、ストレス過多やモチベーション低下により作業スピードや作業能力も低下します。
カスタマーハラスメントによる従業員の休職・離職の増加
カスハラに対応する従業員は心身ともに大きなストレスを抱えることになります。これが原因で業務のパフォーマンスが低下したり、健康被害が生じたりすることもあり、最終的には休職や離職につながる可能性があります。
カスタマーハラスメントによる企業の責任問題
従業員に対する安全配慮義務違反などの法的責任を問われることがあります。冒頭に記した「心理的負荷評価表」でもカスタマーハラスメントが加わり、労災認定される確率も高くなっています。そして、組織が適切に対応しないと心理的負荷も強度が増すことになっており、その分組織への責任が課されているのです。
心理的負荷強度 「弱」 | 心理的負荷強度 「中」 | 心理的負荷強度 「強」 |
「弱」になる例
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「中」である例
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「強」になる例
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カスタマーハラスメントによる企業ブランドイメージの低下
カスハラが起きても組織が何も対応してくれないなどの情報が明るみに出た場合、特にSNSなどで拡散された場合、企業の評判やブランドイメージに悪影響を及ぼすことがあり、その影響は計り知れません。
対策ーカスタマーハラスメントを想定した事前の準備
カスタマーハラスメントもそのほかのハラスメント同様に事前の予防対策が重要です。
カスハラを許さないという企業の姿勢の明確化
組織としてカスタマーハラスメントについての基本情報や姿勢を従業員へ明示することが大切です。(自分たちが顧客サイドになったときも含みます)
従業員のためにカスタマーハラスメント相談対応体制を整える
他のハラスメント同様に、従業員が安心して相談できる窓口を設置しましょう。カスハラ対応について一人で溜め込まないような環境を作ることが大切です。
相談できる場があると心理的負荷も下がりますし、冷静に対応できるようになりますね。
相談窓口の設置については従業員へしっかりと周知することで利用しやすくなります。
また管理職には「相談対応研修」を受講させることを推奨します。なぜならば、カスハラを受けた際に相談するのは上司が一番多いという厚生労働省の調査結果もあるからです。
対応方法の策定
従業員が全員落ち着いて対処できるように、カスタマーハラスメントが起きた際にどのような動きをすればよいかなどマニュアル作成しておきましょう。
カスタマーハラスメント発生時に実際にどのような対応をとるべきかが想定できるようなマニュアル作成を心がけてください。
組織ごとに今までの実例と、今後発生する可能性のある事例としてあげ、それに対する適切な対応や回答を記載しすると信頼性が高まります。
従業員がカスハラを受けた場合の具体的な対応方法をフローチャート等で示すとわかりやすいでしょう。
従業員への教育、カスタマーハラスメント研修
カスハラは頻繁に起こるものでもないため、従業員は対応についてあまり経験値がつかないかもしれません。
マニュアルだけではなく、定期的にカスハラおよびハラスメントについての研修も大切です。
カスタマーハラスメントの基本事項や対応例、心身のケア方法など従業員全員が共通認識として知っておく必要があります。
また、いざ起こったときに適切な対応ができるように、ロールプレイングなどを通して実践的なスキルを習得できる現場を想定した研修が効果的です。(ハラスメント相談対応研修に組み合わせるなども可能です。)
カスタマーハラスメント研修の必要性
カスタマーハラスメントから従業員を守るためにも、顧客への適切な対応を行うためにも、役に立つ内容を業界に合わせてオリジナルで提供しております。(公認心理師監修)カスタマーハラスメント対応法を学ぼう
適切な対応法には、カスハラをする顧客の心理を学ぶことが重要です。その行為をしている人の心理を理解しようとすることで、怒りや不安をなくし適切な対応ができるようになります。(弊社の講師は全員心理師です)
また、カスハラを受けてしまった際に、従業員が自分自身の気持ちをどのように保ち、なるべくストレスを受けずに対応する方法を知っておくことも被害を少なくするために必要です。
時にはロールプレイングなどを行い、実践的なスキルを習得できるようにいたします。ご興味ございましたら下記よりお気軽にお問い合わせください。
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☆カスタマーハラスメント対応法を学ぼう(公認心理師監修)
☆カスハラ防止:加害者、被害者の傾向と心理を理解できる研修(公認心理師執筆)