カスハラ防止:加害者、被害者の傾向と心理を理解できる研修(公認心理師執筆)
公認心理師などの資格を有する講師が心理学的側面も踏まえたカスタマーハラスメント対策研修を行います。まずは、カスタマーハラスメントをする人の心理を説明します。
目次
カスハラ加害者の傾向と心理
カスタマーハラスメントの加害者(以下、カスハラ加害者)は、ほとんどの場合、無自覚のうちにハラスメント行為を行っていますが、なかには確信犯的にハラスメントをしている人もいます。カスハラを行う際の心理として、多くみられるのが下記の4つの行為です。
カスハラは、不安が不満になり、怒り爆発
カスハラをする人は、サービスに対して何らかの「不安」を抱えています。
たとえば「少々お待ちください」と言われたまま何十分も待たされ、ヤキモキしてしまう。予想していた通りのサービスが受けられず、手抜きをされたように感じてしまう。
このようにサービスに対して感じる不安が解消されないままでいると、「不安」はいつしか「不満」になり、さらに「怒り」へと変貌して、結果的に暴言などのカスハラ行為につながってしまうことがあります。
カスハラの背景には「お客様は神様」という誤解がある
一昔前に「お客様は神様です」という言葉が流行りました。この言葉を曲解し、「サービスの受け手は“お客様”なのだから、何をしても許されるのだ」という誤った認識を持ってしまっている人も残念ながら少なくはありません。
そのため、マナーやルールを守らずに自分勝手にふるまい、サービスが気に入らないという理由で人権を踏みにじるような態度で接したりすることで、カスハラ加害者になっている人もいます。
ハラスメントについての知識不足
一般の人々は、ハラスメント防止についての十分な知識を持っていないことが少なくありません。
そのため、相手に対してよかれと思って言った言葉(「そろそろ嫁に行かないと」「やせた方が良いんじゃない」など)や何気なく行っている態度(ボディタッチ、気に入らない人を無視する、など)がハラスメント行為にあたるとは気づいていないことがあります。
「ごねればこっちのもの」というカスハラ確信犯
なかには、確信犯で悪質なカスハラ行為を行う人もいます。
たとえば、過失とは言えないような小さな欠点をあげつらったり、ありもしない欠陥をでっちあげたりして、支払いを拒否、損害賠償を要求するケースもあります。
こうした人は自分の要求を通すことが目的であるため、要求が通らないと居座りや脅し、ネットでの悪口の拡散などを行うなどして、しつこく嫌がらせを繰り返すこともあります。
カスハラ加害者対策研修~自分を責めずに組織で対応を検討
以上のように、カスハラには無自覚の行為もあれば、確信犯で行っている悪質な行為もありますが、いずれにしても受け手がつらいと感じたときには、一人で抱えて我慢したり、力不足だと思い込んで自分を責めたりしないことが大切です。
対策法としては、「カスタマーハラスメント対応法を学ぼう」をご参照ください。
カスタマーハラスメント対応法を学ぼう(公認心理師監修) | ハラスメント研修とメンタルヘルス対策の株式会社ハートセラピー (heart-t.co.jp)
また「カスタマーハラスメント対策研修」を受講し、組織全体で対応策を把握しておくと安心です。
カスハラを受けやすい人の傾向と心理
カスタマーハラスメントは誰もが受ける可能性のある嫌がらせではありますが、なかでもハラスメントの被害者に遭いやすい人がいます。
下記の4つのタイプの人は、比較的カスハラ被害に遭いやすいと考えられます。
カスハラは、ビクビク、おどおどした人に向きやすい
一般的にハラスメントの加害者は、見た目にも立場的にも「弱そう」に見える人に対して傲慢な態度をとろうとする傾向があります。
したがって、テキパキして機敏な人、堂々として凛としている人より、ビクビク、おどおどして自信がなさそうな人のほうが、カスタマーハラスメントの被害に遭うリスクが高いと考えられます。
カスハラは、新人や未熟なスタッフが対象にやすい
新人や若手スタッフは、行き届いたサービスを十分にできないことがあります。そのことが顧客の怒りを買い、結果的にカスハラの原因をつくってしまうことがあります。
また、顧客の状況を表面的にしか理解できず、浅いレベルで判断して対処してしまったために、結果的に満足のいくサービスを提供することができず、怒りを浴びせられてしまうことがあります。
カスハラは、職場においてのマイノリティが受けやすい
男性が多い職場における女性スタッフ、日本人が多い人職場における外国籍のスタッフのように、職場において「マイノリティ」とみなされる人は、顧客から差別的な態度を受けてしまうことがあります。
たとえば「女じゃ話にならない。男のスタッフを出せ」「外人には世話されたくない。日本人に変えてくれ」というように言われて、顧客から人権侵害にあたるような言動を受けてしまう例もあります。
カスハラは、マナーにかけた態度が引き金に
サービスを受ける側は、サービスをする人の態度や意識をよく観察しています。そして、自分のことを丁寧に扱ってほしいと願っています。
そのため、サービスをする側の服装がだらしなかったり、髪が乱れていたり、学生のような軽い言葉や態度で接したりすると顧客は非常に不愉快になって拒絶的な気持ちが言葉や態度に出てしまい、結果的にカスハラが生じてしまうことがあります。
カスハラ被害者にならないために~カスハラ対策研修で対応力アップ
以上でお伝えしたように、カスタマーハラスメントの被害回避は、本人の努力では不可能なことも多いのですが、なかには意識次第で被害リスクを減らすことができるものもあります。
たとえば、ビクビク、おどおどしがちな人は、仕事をする上では自信のない態度を見せないように気をつけていけば、顧客の不安を減らせます。
マナーに欠けた態度に心当たりのある人は、身なりやふるまい、言葉遣いに気をつけていけば、顧客から拒絶的な態度を向けられることも少なくなります。
すると、結果的にカスハラ被害者になるリスクを減らすことができるでしょう。
このようにして、大切な顧客を「カスハラ加害者」にしないために、サービス提供者側が努力できることもたくさんあります。
そうしたポイントも、ぜひ「カスタマーハラスメント対策研修」で学んでおくことをお勧めします。
執筆:公認心理師・精神保健福祉士・産業カウンセラー 大美賀直子
カスタマーハラスメント対策研修(120分)一例
研修概要 企業・店舗・病院・介護施設など業種に応じて内容もカスタマイズしております。
顧客や患者から、職場のスタッフがハラスメントを受けた際、その場でどう対応するべきか、組織としてどう対応するべきかを総合的に理解します。顧客との信頼関係を築きながら、良好なサービスの場、職場にしていくためのポイントを学ぶことができる研修です。120分研修は、基礎知識と基本的な対応方法の把握を目的としています。180分研修にすることで、ケーススタディを加えてよりじっくりと対策を検討していただくことも可能です。
カスタマーハラスメントの定義と実態
・カスタマーハラスメントとは、なぜ起こるのか
・カスタマーハラスメント理解度チェック(個人ワークとディスカッション)
・カスタマーハラスメントの実態
カスタマーハラスメントの具体的内容
・身体的攻撃・精神的攻撃の具体的内容と事例
・セクシュアルハラスメントの具体的内容と事例
・グループディスカッション(気づきや感想、意見交換)
・前半質疑応答
カスタマーハラスメントの発生を予防
・カスタマーハラスメント防止のための施策
・カスタマーハラスメントを招かないための10か条
・被害を受けた当事者がその場で行う対応の基本 (個人ワーク)
・行為者へのその場での上手な伝え方 (ペアワーク)
カスタマーハラスメント発生後の組織としての対応
・組織による被害者、行為者への上手な事実確認方法
・行為者への上手な注意のしかた
・悪質なカスタマーハラスメントへの対応の基本
・まとめと質疑応答
【カスタマーハラスメント関連コラムラインアップ】
☆カスタマーハラスメント研修で組織としてのリスクを防ぐ(公認心理師監修)
☆カスタマーハラスメント対応法を学ぼう(公認心理師監修)