ハラスメント加害者にならないための怒り感情「トレーニング」方法とは
近年、「ハラスメント」という言葉は日本社会において日常の「言葉」として当たり前に使われるようになりました。
そのことにより部下を叱れない上司も増えており、その代わりに言えない分イライラすることが増えているようです。
今回はハラスメントの根源にあるを「感情」を知り、自己成長とハラスメント防止につなげていきます。
目次
感情とは何か?を知りハラスメントを防止
感情はあなたの内面から生まれる気持ちであり、大きく2つのパターンに分けられます。
瞬間的に湧き上がる感情
これは「喜び」「怒り」「悲しみ」「驚き」「恐れ」などで表現されます。これを陸上に例えて「短距離走」と伝えています。
瞬間的に感情が湧き上がるが、落ち着くのも早いからです。一瞬でスタートを切りますが、ゴールまで短時間で走り抜けます。
この感情は原因が明確なことも特徴です。例えば、「怒り」の感情を挙げると、「ミス・失敗した」「期限に間に合わない」など、怒りの原因が明らかです。
じわじわ続く感情
この感情は「モヤモヤする」「イライラする」「ムカムカする」という表現で例えられます。これも陸上に例えると「長距離走」と伝えています。「気分」という表現で表されることが多いです。
この原因は明らかな場合もあれば、そうでない場合もあります。例えば、「ミス・失敗した」ことから「怒り」感情が収まり、その後の気分に影響を及ぼす現象です。「ムカムカする」「イライラする」という現象になります。すぐに気分は良くならず、場合によっては次の日まで影響することもあります。
このように「感情」には2つのパターンがあることを覚えておくと良いでしょう。
パワハラを防ぐために、上司が備えると良い必要なスキル
上司として身につけておくべきスキルとして、「感情」の「怒り」に関するスキルがあります。
「怒り」感情をマスターすることで、風通しの良い組織を作ったり、部下のやる気を上げることもできます。
組織成長の「鍵」と言っても過言ではありません。しかし、多くの上司は「感情」について学んでいないが故に、
部下との関わり方に悩み、ハラスメントを恐れるあまり精神的な距離をとってしまっています。
怒り感情を「コントロール」ではなく「トレーニング」
研修で受講者から「短気な性格を変えることはできますか」と質問されることがあります。
「性格を変えることはできませんが、トレーニングを積めば、怒りや苛立ちを露わに表出することはなくなります。」と回答しています。
よく「感情をコントロールしましょう。」と言われますが、かつての私も「コントロール」という言葉を使っていました。
しかし、感情のことを学び、理解することで、「コントロール」でなく「トレーニング」だとわかりました。
「怒り」の感情を意識的にコントロールしている場合と、無意識的にコントロールしている場合があります。
意識的に怒りをコントロールしている状況は、例えば「会議の場で他の人の発言でムカッとしたが、その場には他部門の上司などがいるから、怒らないで反応せずに我慢した」などです。
一方、怒りの感情を無意識にコントロールしている場合は、「課長がミスをした部下を怒っている最中に、部長から電話が掛かってきて、今まで怒っていた声とは一変し、普通に電話をしている」など。思い当たる方も多いのではないでしょうか。
パワハラを防ぐための「感情のトレーニング」とは
私もトレーニングを積んで身につけたスキルであり、ぜひ、多くの方に実践してほしいと思います。
マネジメントやリーダーシップ、ハラスメントなど、あらゆる企業研修で感情を伝えるときに、受講者の方に
「私は生涯、怒りを露わにすることはないでしょう」と公言しています。なぜなら、相手に怒りを露わにしても、
自分にメリットがないことがわかったからです。その理由は「怒り」で相手は「抵抗」「反発」の感情が湧き上がり
自分の話に素直に耳を傾けてくれないからです。
人は「怒る」ことで自分にメリットがあると思っているから怒るわけです。その認識が違うことがわかれば、怒って相手を
「変えよう」「動かそう」「言い負かそう」という行動にはならないと考えています。
そのため、相手が耳を傾け、あなたの話を素直に聞くためには、まず、感情を整えるトレーニングをする必要があります。
感情を整えるトレーニングには「言葉」「行動」「捉え方」の3つのキーワードがあります。
言葉で感情トレーニングする
「レモン」と聞いて、あなたはどのような反応になりましたか?多くの人は、レモンをイメージして、唾液が出てきたのではないでしょうか。
これが、感情と何が関係あるかと思われた方もいるかと思います。実は感情の仕組みを理解するには、一番わかりやすい方法です。
レモンという「言葉」を頭の中で「イメージ」し、そして唾液が出る。つまり、唾液とは「感情」の反応です。
「言葉」で「イメージ」し、「感情」に影響を与えるということです。言葉が自分や相手の感情に影響を与えるということです。
このことを、「感情が伝播する」と言います。
気づいた方もいるかもしれませんが、ネガティブな言葉はネガティブ感情になり、ポジティブな言葉はポジティブ感情になるという仕組みです。
この仕組みを私は研修でも活用しています。
受講者の皆さんは多忙な状況において研修に参加しているので、正直、「仕事をしていた方がいい」と思っている方が少なからずいます。その気持ちは私も重々承知しております。しかし、その気持ちだと険しい表情になっており、雰囲気も晴れやかではありません。そこで、「言葉」のチカラを借りています。
具体的には、教室形式のときはお隣さん同士、島形式のときはグループメンバー全員で、「今日の研修楽しみましょう。」と
声を出してもらいます。するとどうでしょう。今まで険しい表情や笑顔もなかった方も、全員笑顔で笑ってくれます。
そこには照れ臭さもあると思いますが、「言葉」はこれだけ自分の感情や相手・周囲の感情に影響を及ぼすパワーがあります。
言葉のチカラは仕事だけでなく、仲間や家族にも活用できますので、是非、日常でも意識したいですね。
このようにトレーニングとして、あなたの日常のコミュニケーションで使っている「言葉」に意識を向け、
自分にも、相手にもいい感情を与えるようにしましょう。
行動で感情をトレーニングする
最近、「頭にきた」「腹立たしいかった」ことを思い出してください。イメージできましたでしょうか。
イメージするとその時の感情が沸々と湧き上がってくるかと思います。その状況で、「ガッツポーズ」をしてみてください。気持ちの変化を感じとっていただけましたでしょうか。気持ちの変化に大きい、小さいはあるかもしれませんが、感情の変化を感じていただけたかと思います。
ガッツポーズという「行動」が「感情」に影響を与え、ネガティブな気持ちからポジティブな気持ちへと感情が変わることがあります。つまり、「行動」が先で、「感情」が後から影響を受けるのです。
研修で受講者に伝えているのは、デスクワーク中にネガティブな感情を感じた場合、そのまま作業を続けると「怒り」や「イライラ」が解消されず、むしろネガティブな感情が増幅されるということです。
例えば、パソコンで作業しているとき、ネガティブな感情によりキーボードを強く叩いてしまい、その結果さらにイライラが増すことがあります。
まずは、「身体を動かす」と「感情が変わる」ということを覚えておいてください。
私は休日に近くの公園や河川敷の遊歩道でスキップをすることがあります。すると、自然と楽しい気持ちになり、笑顔になります。興味があれば、ぜひ試してみてください。
捉え方で感情トレーニング
私たちは物事を捉える際に、ある一面だけを見て「全体像」として捉えがちです。
例えば、「部下が会議の開催時間に遅れてきた」場合、どのような感情を抱くでしょうか?
「開始時間に遅れるなんてありえない」と怒りや苛立ちの感情になる場合もあれば、「何かあったのかも」と部下を気遣う感情になる場合もあります。
このように、人によって事象の「捉え方」によって抱く感情は異なります。
つまり、「捉え方」が変わると「感情」も変わるのです。
次の事例でトレーニングをしてみましょう。
「従来の捉え方」と「新しい捉え方」で考えてみてください。
1. 部下が遅刻をしてきた
2. メンバーが会議で全然発言しない
3. 上司が朝に指示したことを午後に急に変更した
4. 提案が却下された
5. 部下がミスをした
<回答例>
1. 部下が遅刻をしてきた
・従来の捉え方:部下が遅刻するのは怠慢や時間管理ができないからだ。
・ 新しい捉え方:遅刻したのは家族の急用や電車遅延、車の渋滞があったのかもしれない。
2. メンバーが会議で全然発言しない
・従来の捉え方:会議で発言しないのは考えていないか、やる気がないからだ。
・新しい捉え方:会議の雰囲気が発言しづらいのかもしれない。促すように質問してみよう。
3. 上司が朝に指示したことを午後に急に変更した
・従来の捉え方:急に指示を変えるのは計画性がなく気まぐれだ。
・新しい捉え方:上司が新しい情報を得て、早めに指示を変えたのかもしれない。
4. 提案が却下された
・従来の捉え方:提案が却下されたのは、自分の提案を理解しようとせず軽視しているからだ。
・新しい捉え方:上司が全体の優先順位やリソース配分を考えて、提案を見送ったのかもしれない。
5. 部下がミスをした
・従来の捉え方:ミスをしたのは注意散漫だからだ。
・新しい捉え方:他の仕事に追われていたのか、体調が優れなかったのかもしれない。
5つの事例をもとに「捉え方」を変える方法をご紹介しました。
この「捉え方」を変えるトレーニングは仕事だけでなく、日常のあらゆるシーンでも応用できます。
その結果、感情も変わってきます。日々のトレーニングを積み重ねていきましょう。
ここまで述べてきたように、「言葉」、「行動」、「捉え方」を変えることで「感情」が変わることを理解していただけたと思います。感情はトレーニングの結果、コントロールすることができます。私もこのトレーニングの結果、怒りや苛立ちをコントロールすることができました。
当社では今回のコラム著者である杉山修をはじめ、ハラスメント研修講師歴10年以上かつカウンセラーでもあるメンバーがハラスメント加害者あるいは、行為をしている方に対して個人的な「パーソナルトレーニング」を行っております。
今までは、大学・企業など組織から受け入れておりましたが、個人の方からも対応可能としましたので、
もしご自身の発言や行動がハラスメントになるかも!?と考えて改善したい方やコミュニケーション、感情コントロール、コーチングなど、ご自身に必要なスキルを学び自己成長したい方もお問い合わせください。こうしたスキルは指導する立場であれば必ず必要なスキルです。オンライン(全国)か対面(武蔵小杉)にて個人研修いたします。
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