ハラスメント相談員のメンタルをケアしよう(公認心理師執筆)
ハラスメント相談員の方のメンタルケアは、非常に重要な課題です。
日々、辛い相談を受ける中で、相談員自身の心の負担も大きくなってしまうことがあると思います。弊社の相談対応研修に参加された方の中にもすっかり疲れてしまっている方がおられました。まじめで優しい方ほど危険です。
相談員のメンタルヘルスを守るために、組織としての対策しておくことは被害者への二次被害を起こさないためにも重要です。
目次
組織が行うハラスメント相談員のメンタルケア
ハラスメント相談に対する制度の整備
相談員の選択と任期:相談員は2年ごとに担当者を変えるなど一人の方に負担がかからないようにすることも必要です。たいていの場合通常の業務と兼務の方が多いので任期を決めましょう。
また、相談員を指名する時はその方の家庭の事情なども配慮して強制してはいけません。
人選としては、口の堅い、誠実な、人の話を聞ける方など信頼できる方を選びます。この点については組織の規模により難しいこともあると思いますがなるべく配慮していただきたい項目です。
相談員の役割を明確化: 相談員の役割を明確にし、他の業務とのバランスを取れるようにしましょう。
相談を聞くまでなのか、聞いた後に調査もするのか、行為者事実確認も行うのか、組織により役割は異なります。役割が明確でないと被害者にも不安を与えてしまいます。
組織からの情報提供と役割明確化:相談員の悩みとして、「相談を受けた後に会社に報告したがその後、会社がどのような動きをしているかがわからなくて、被害者から尋ねられて困った」という話があります。会社として今何をしているのか(調査委員会開催中など)を相談員には共有しましょう。
また、相談後に相談員が被害者へのフォローをどこまですればよいのかも役割を明確にしておきましょう。
フォローの声掛け:相談を受けた相談員は組織に被害者からの許可を得た範囲で相談があったことの報告をします。
その後は人事担当者などが当該相談員の心身の状態にも気を配り、必要なサポートを提供できるようにしましょう。
専門家の活用: 心理カウンセラーなど、専門家のサポートを受けることができる体制を整えましょう。外部にアドバイスしてくれる人が誰かいるだけでも安心して抱え込まずに対応することが出来ます。
(弊社でも相談員からの相談に乗る「外部アドバイザー契約」をいくつかの組織にて行っております。外部相談窓口契約にも相談員からの相談対応も付いています。)
ハラスメントや相談対応に関する教育と研修
ハラスメントに関する知識のアップデート: 最新のハラスメントに関する知識を習得し、相談対応のスキルアップを図り自信が持てるようにしましょう。「これでいいのかしら?」と不安を抱えて相談対応していると相談員は大変なストレスとなります。
自己理解を深める研修やカウンセリングの機会を与える: 自己理解を深めることで、自身の感情をコントロールしやすくなります。ストレスセルフケアの研修を受講することで、オンとオフの切り替えや前向きな課題解決法を身につけてストレスをため込まないこともできます。
相談員個人の取り組み(相談員の方に教えてください)
同僚との交流: 同僚と積極的にコミュニケーションを取り、悩みを共有しましょう。(但し相談内容以外についてです)
相談員内部での相互相談:集団守秘義務の範囲において相談内容や対応について一人で抱え込まず相談しましょう。
専門家への相談: 必要であれば、専門家(心理カウンセラーやコンサルタントなど)に相談しましょう。
リフレッシュ:通常のメンタルヘルスケア同様相談対応している時間以外では当該問題については考えず、切り替えをしましょう。
その他
チームで対応: 一人で抱え込まず、チームで相談対応を行うことで、負担を分散できます。
記録の重要性: 相談内容を記録することで、客観的に状況を把握し、今後の対応に役立てることができます。
これらの対策を組み合わせることで、相談員のメンタルケアを効果的に行うことができます。
相談員の方々が安心して業務に打ち込めるよう、組織全体でサポート体制を構築することが重要です。
弊社では相談対応研修のほかにストレスセルフケア研修も実施しており、双方を交えた研修も可能です。事前の打ち合わせにてオリジナルの研修内容にしますのでそちらもご検討ください。