安心して働ける介護施設を目指して──介護の現場でハラスメントのない職場づくり
介護施設の現場で働く職員の方々の声に耳を傾けると、利用者や家族からのハラスメントだけでなく、職員同士、経営者・上司から部下へのハラスメント、部下から上司へのハラスメントも深刻な課題であることが浮かび上がってきます。
介護の現場は、身体的・精神的負荷が高く、チームワークが不可欠です。だからこそ、職員間の人間関係が悪化すると、業務の質だけでなく、職員の健康や離職にも直結します。
私自身、母が介護施設でお世話になった際、職員の方々が互いに支え合う姿を見て、深い安心感を覚えました。そうした環境が築かれていたことは、今振り返っても本当にありがたいことだったと思います。
一方で、現場の状況は施設によって大きく異なり、限られた人員や時間の中で、日々厳しい選択を迫られている職員の方々も多くいらっしゃいます。
だからこそ、誰もが安心して働ける環境が少しずつでも広がっていくことを願っています。「穏やかさ」が特別なものではなく、どの現場にも届くように──そんな思いを込めて、今このテーマに向き合っています。

目次
介護職員同士のハラスメント──「指導」と「攻撃」の境界線
現場では、経験年数や資格の有無によって上下関係が生まれやすく、そこからパワーハラスメントが発生することがあります。
例えば、先輩職員が新人に対して「こんなこともできないの?」「これくらい自分で考えて」といった言葉を繰り返すことで、指導の域を超えた精神的圧力となるケースがあります。また、情報共有の場から特定の職員を外す、休憩室での無視、業務連絡を意図的に伝えないといった「仲間外れ」も、表面化しにくいながらも深刻なハラスメントです。こうした行為は、職員の自尊心を傷つけ、職場への信頼を損ないます。
私どもは介護施設でカウンセリングを長年行わせていただいておりますが、「休憩室でいない人の悪口を聴いているだけでも気分が悪い」という悪口や噂話というハラスメントもよく起こります。
さらに、セクシャルハラスメントも報告されています。性的な冗談や容姿への発言、不適切な身体接触などは、職員間であっても許されるものではありません。マタニティハラスメントも同様で、妊娠や育児を理由にシフトを減らされたり、昇進を見送られたりする事例も存在します。
介護職のハラスメント 部下から上司へ
介護施設の特徴として、管理者よりも介護職員がベテランだったり年長だったりという状況があります。中途入職の方が多いからです。年長の職員が暴言を上司に吐く、自分のやり方に固執しており指示に従わないというような相談もあります。マネジメントする側は管理職となるが、マネジメントやリーダーシップの研修を受ける機会が少なく、部下とのやり取りに悩んでいる方も多いです。
介護職のハラスメント経営者・管理者からのハラスメント──構造的な圧力の実態
施設運営側からのハラスメントは、より見えにくく、かつ構造的な問題として根深いものがあります。
人手不足を理由に「休めない」「残業は当然」といった圧力をかける、ハラスメントの訴えに対して「気にしすぎ」「我慢して」と取り合わないなど、あるいは話は聞くがその後のアクションはないなど、職員の声が軽視される環境では、安心して働くことができません。
また、評価や昇進において不公平がある場合も、職員のモチベーションを著しく低下させます。お気に入りの職員だけを優遇し、他の職員の努力を認めないような運営は、職場全体の信頼関係を損ないます。
さらに、契約更新や雇用に関する脅しも問題です。「文句を言うなら契約更新しない」といった言動は、職員の立場を不安定にし、声を上げることをためらわせる要因となります。
ハラスメントのない職場がもたらす価値
介護は「人」が「人」を支える仕事です。職員が尊重され、安心して働ける環境があってこそ、利用者にも質の高いケアが提供できます。ハラスメントのない職場は、職員の定着率を高め、チームの連携を強化し、結果として施設全体のサービス品質向上にもつながります。
ハラスメントの防止には、職員一人ひとりの意識改革だけでなく、施設としての明確な方針と対応体制が不可欠です。相談窓口の整備、定期的な研修、第三者によるチェック体制など、組織的な取り組みが求められます。
また、ハラスメントの外部相談窓口だけではなく例えば、管理職に対してフォローアップとして定期的なカウンセリングやコーチングを受講させるのも効果があります。日ごろ管理職がストレスを抱えていると余裕がなくなり、職員の話が聞けない、イライラしやすくなるという状態になりますので、パワハラ対策としては管理職への個別フォローがかなり重要となります。弊社でもオンラインや対面にていくつかの福祉関係事業所でこのようなサービスをさせていただいておりますが、皆さん日ごろメンバーとの関りで困っていることも多く相談していただきアドバイスをしたり、コーチングをしております。
職場の安心と信頼を育てるハラスメント研修
介護職向けのハラスメント研修は、現場の声を拾い上げ、共通認識を育てるための大切な機会です。日々の業務に追われる中では、ハラスメントの定義や境界線、対応方法について改めて考える時間を持つことが難しいかもしれません。だからこそ、研修という場を通じて「これはハラスメントかもしれない」「こうすれば防げるかもしれない」と気づきを得ることが、職場全体の安心につながります。悪口を言うことがハラスメントになると知っていれば噂話をすることも控えるでしょう。
また、研修は「誰かを責めるため」ではなく、「誰もが守られるため」のものです。立場や経験にかかわらず、安心して声を上げられる環境づくりの第一歩として、研修を活用していただければと思います。
施設の中で働くすべての方が、互いに尊重され、支え合える職場を目指して──。研修はその土台を築くための、実践的で心強いツールです。
弊社では、こうした現場の課題や職員の声に丁寧に耳を傾けながら、施設ごとのニーズに合わせたカスタマイズ研修をご提供しています。
たとえば、職員間のコミュニケーション改善を重視したプログラムや、管理者向けの対応力強化研修など、現場の状況に応じて内容を設計することが可能です。
「忙しい現場でも参加しやすい」「実際の困りごとに即した内容で学べる」といった声も多く、研修をきっかけに職場の空気が変わったという事例もあります。
介護の現場で毎年研修を繰り返した結果「成長感・職場の雰囲気・やりがい・患者や利用者との関係」などが上がりました。
詳しくはこちらをご覧ください。ハラスメント対策研修を毎年続けた効果紹介
介護施設や訪問介護関連の業界にて下記のような研修を開催いたしました。
・介護現場のハラスメント対策研修~お互いに活かしあえる職場づくりを目指して~
・アンガーマネジメント研修
・解決志向で前向きな課題解決研修~資源を活かす指導法~
・メンタルヘルスマネジメント~早期発見からメンタル不全を出さない職場づくりまで~
・レジリエンス研修~ストレスと上手につきあう方法、セルフケア~
・医療介護の現場のカスタマーハラスメント研修
ハラスメントのない職場づくりは、一人ひとりの意識と、組織としての取り組みの両輪で進めるものです。まずは、研修という小さな一歩から、安心と信頼の土台を始めてみませんか。講師が直接打ち合わせを行いますので御社に合う内容の研修をいたします。
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