マタニティハラスメント(マタハラ)とは?事例や対処法をご紹介
マタニティーハラスメントの現状
働く女性が妊娠・出産を理由として解雇や雇止めをされたり、精神的・身体的な嫌がらせを受けることです。
2016年4月の育児介護法、男女雇用機会均等法改正(2017年1月1日施行)により、事業主には、職場におけるマタハラ防止措置義務が課されることになりました。また、同時に派遣法も改正され、派遣先でも同様の措置が求められます。
しかし、今もなお職場における妊娠・育児への理解は低く「休みづらい」と感じている社員が多いようです。
厚生労働省が実施した調査(令和2年職場のハラスメントに関する実態調査)では、過去 5 年間に妊娠・出産・育児休業等ハラスメントを経験した者の割合は 26.3%でした。
目次
タイプ1 制度利用への嫌がらせ型
タイプ2 状態への嫌がらせ型
次のような言動はマタハラになります(育児・介護休業等に関しても同様)
Ⅰマタハラのタイプ
〔タイプ1〕 制度利用への嫌がらせ型
妊娠・出産・育児に関する制度を利用したいと相談、請求をしたとき、実際に利用した後に、制度の利用を妨害したり、解雇や不利益な取り扱いをほのめかしたり、繰り返し嫌がらせをしたりする。男性も被害者として多いです。
■上司のNG言動例:「妊娠したら、うちの会社ではとても働き続けられないよ。正社員から非常勤に切り替えてはどうかな?」
「もう、大事な仕事は任せられないね」「おまえはかみさんがいないのか?」「両親とかに手伝ってもらえないの」
■同僚のNG言動例:「男なのに育休を取るの? 奥さんの尻に敷かれてるんじゃない」(何度も言って嘲笑する)
〔タイプ2〕状態への嫌がらせ型
妊娠、出産をし、またそのことによって労働能率が低下したり、危険で有害な業務や残業などができない状態に対して、解雇や不利益な取り扱いをほのめかしたり、繰り返し嫌がらせをしたりする。こちらは妊娠している状態に対してですので被害者は女性限定です。
■上司のNG言動例:「妊娠してから以前のように働いてもらえなくなったから、辞めてもらえないかな」
■同僚のNG言動例:「あなたが妊娠(出産)したことで、私たちの仕事が増えて困ってるんですけど」(何度も嫌味を言う)
「長く休めていいよね~」「またぁ」陰口を言う
※言葉にしなくてもボディーランゲージでもハラスメントになりえます。例えば、表情でめんどくさそうにする、困ったという表情をする ため息をつく
マタハラ予防対策方法
法改正により企業に義務付けられた内容である以下の5つに沿い詳細を説明します。
1.事業主の方針の明確化とその周知・啓発
マタハラにあたる言動をしてはいけないこと、妊娠、出産をした場合には制度を利用できることを周知し・啓発する。周知の方法としてはハラスメント研修に組み入れる、マタハラ防止のためのポスターを貼る、組織として育児や介護、妊娠出産に対して支援していくことなどのお知らせを流すなどの方法があります。また、ハラスメント行為者は厳正に対処すること、その対処の内容を就業規則等の文書に規定して周知することも必要です。
2.マタハラ相談対応のための整備
相談窓口(セクハラ、パワハラ等の窓口と同じであることが望ましい)をあらかじめ設置し、相談担当者が適正に対応するようにする。事後対応だけでなく、マタハラかどうか判断に迷うようなケースであっても、相談に広く対応する。→つまり相談対応者は事前に相談対応法の研修を受けておくと安心ですね。
3.マタハラ発生後の迅速・適切な対応
事実関係を迅速・正確に確認し、事実関係が確認できた場合には、速やかに被害者・行為者それぞれへの措置を行う。さらに、再発防止に向けた措置を講じる(事実関係が確認できなくても同様)。被害者と行為者の事実関係で双方の話にずれが生じた際は、被害者の同意を得た後に、第3者にも事実確認をすることもあります。ハラスメント事実確認研修はこちらでご紹介
再発防止としてはやはりハラスメント研修を行うことをお勧めします。また、職場の環境要因もあることが多いのでそちらに対しても早急に改善が必要ですね。
4.マタハラの原因や背景となる要因を解消
上記で職場環境要因と記載しましたが、業務体制の整備等の必要な措置を行うことは一番大事です。妊娠・出産した場合には制度を利用できること、周囲とのコミュニケーションを図りながら体調等に応じて業務を行うことを意識してもらうよう、周知・啓発するのが望ましいですね。
一人の人しかわからない業務ではなく、チーム内でいざというときは代行できるように普段から業務を理解しておくようにする。
休暇中に1人に全部任せるのではなく、業務を分担できるようにする。
マタハラの要因には無意識の差別(アンコンシャスバイアス)が背景にあることも多いです。特に男性が育児休暇をとるときなどはよくある話です。
「育児は女性がすべきだ」という偏見を持っていると自然に男性がお休みを取りたいと申し出た際に「なんで!奥さんがすればよいでしょ」と考えてしまい、その考えに基づいて発言してしまうのです。ハラスメント研修ではアンコンシャスバイアスに気づくなどの内容も入れると、そのほかのハラスメントも同時に防ぐことができます。
5.その他のマタハラ対策
相談者、行為者、第3者等のプライバシーを保護し、相談や事実関係の確認によって不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発しましょう。
マタニティーハラスメント対策はコミュニケーション不足も要因の一つです。お休みしたい人がいたときには一方的に「無理です」と拒否するのではなく、まずは状況を聞いて対応しましょう。どうしても会社として難しいことがあった場合は、社会保険労務士などに相談して対応することもお勧めです。特に管理者などが一人で決めてしまうことは避けましょう。
妊娠した方に対して、体調的に大変だろうと勝手に想像してプロジェクトから外してしまい、マタハラだといわれた管理者もいます。同じ妊娠でも人により体調も価値観も異なりますので、勝手に決めないで必ず本人の意見を聞いてください。