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コラム
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職場のハラスメントに関する実態調査から読み解くセクハラ対策

令和5年度の厚生労働省による職場のハラスメント実態調査は、職場環境の改善と労働者の保護を目的として行われ、この度、調査結果が報告されました。
この調査は、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、顧客からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)、および就活セクハラに焦点を当てています。

今回のコラムではセクシュアルハラスメントに関して、詳細を見ていきます。日本では1986年ころからセクハラが問題視されており、男女雇用機会均等法でもセクハラ防止が義務付けられておりますが、いまだに相談が多いという実態があります。

組織としては従業員に対して社内研修を開催するなどの予防対策が必要です。

セクシュアルハラスメント調査からみるセクハラの要因

「令和5年度ハラスメント実態調査」によると、過去3年間にセクハラ相談あったと回答した割合は39.5%です。

セクハラの要因1:セクハラの具体的内容からひも解く

セクハラの内容として最も多かったのは、「性的な冗談やからかい」で、全体の女性49.7%男性49.1%を占めました。
次いで「不必要な身体への接触」が女性26.2%男性15.3%を占めています。

「性的な冗談やからかい」は相手と自分が親しいであろうという思い込みや、自分が性的な話題が好きなため、「他の人も下ネタで盛り上がるだろう」という思い込みから起こしやすい言動です。
研修をしていても、「下ネタが話せないなら、もうコミュニケーションとれない」とか、「親しい仲間うちであれば良いですよね」という質問をされる方がいます。
 加害者の個人研修をしても、加害者から「コミュニケーションを盛り上げようとしただけです・・」とか「からかっただけで、悪意はなかったのに・・」という言い分を聞きます。
「男性だけの宴会なら良いですよね」と問われることもありますが、結果を見てわかるように男性も不快に感じている方がたくさんおられるのです。

自分だけは大丈夫、この人なら大丈夫という思い込みが一番危険なのです。

セクハラの要因2:セクハラ行為者の立場からひも解く

セクハラの行為者は「上司(役員以外)」が51.1%を占め、「同僚」21.1%、「会社の幹部(役員)」が16.5%で続いています。

上の立場(顧客も含む)の方からセクハラ行為を受けても、被害者心理としては「人間関係を壊したくない」「指導してくれなくなったら困る」「仕事をくれなくなったら困る」そんな考えが浮かびきっぱりと断ることが難しいのです。明確に拒否されない上司や同僚は「嫌がられていない」と受け止め、引き続きセクハラを繰り返すということも多いです。
被害者が断れないのが悪いのではなく、相手の気持ちに配慮できない、マナーを守らないことがアウトです。

ただし、相手に不快感を与えないで自分の思いを伝えることができる断り方や気があると誤解されないための普段の関わり方を学んでおくこともトラブルに巻き込まれないためには必要です。
株式会社ハートセラピーの研修ではそのような内容を盛り込むこともあります。

セクハラの要因3:セクハラを受けた属性からひも解く

下記のデータはセクハラを受けた経験の男女別・雇用形態別の比率です。被害者としては女性管理職が一番多く13.6%、
次いで女性正社員9.7%となっています。また派遣社員も8.1%と多いことがわかります。
女性の管理者に被害が多いのは、管理者は一般者に比較してより多くの方と関わることが多いからと推測されます。

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)という言葉をご存じの方も多いと思います。現在は性別も雇用形態も「対等」という意識も取り組みも強まってはいますが、それでもまだ業界によっては女性を下に見ている現状もあります。「女性は男性より弱いから守られる立場だ、でしゃばるな」「派遣社員は若くて可愛いほうがお客様も喜ぶ」というような発言を聞いたことがありますが、こうした「女性は子育てに専念する方が良い」「男性は重要なポジションにつくべき」という考えは偏見です。
また、偏見があると自分さえも気づかないうちに差別して相手を判断してしまうことになります。

性別や年齢などで判断をするのではなく、相手を個々の特性を持つ人として関わること、職場の仲間は対等なビジネスパートナーなのです。

セクシュアルハラスメントによる心身への影響

セクハラを受けたことによる心身への影響は深刻です。セクハラを受けた被害者の多くが「怒りや不満、不安などを感じた」(48.5%)と報告しています。これらの感情は、被害者の精神的健康に大きな悪影響を及ぼし、うつ病や不安障害を引き起こす可能性があります。また、「仕事に対する意欲が減退した」(33.0%)という報告も多く、被害者の職場でのパフォーマンスやキャリアの成長にも悪影響を及ぼします。

さらに、セクハラを受けた頻度は男女・雇用形態別に関わらず、20%以上が「何度も繰り返し」受けていることがわかります。

持続的なストレスは身体的な健康にも影響を及ぼし、睡眠障害や食欲不振、慢性的な疲労感を引き起こすことがあります。
このように、セクシュアルハラスメントは被害者の心身に多大な負担をかけるため、早急な対応と支援が必要です 。

 

セクシュアルハラスメント効果がでる対策法

セクハラに対する組織の取り組みとその効果的な対策について述べます。就業規則にセクハラが起きた場合の懲戒処分について記載しておくことはもちろんですが、その他にも下記のような予防対策が必要です。

セクハラ対策研修でハラスメントを防ぐ

セクハラを防止するための基本的な取り組みは、従業員全員への定期的な研修と啓発活動です。これにより、セクハラとなる言動、セクハラを防ぐための対応法(被害者になるべくならないための断り方)、法的責任についての認識を深めます。
また、ハラスメントが発生した場合の相談対応方法についても全員が学ぶことで被害拡大を防ぐことができます。

ハラスメント相談窓口設置で被害を抑える

ハラスメントの相談窓口の設置と周知は義務化されています。被害者が安心して相談できる環境を整えるために、内部だけでなく外部の専門機関を設置して連携することは有効です。被害者が相談窓口を選択できるため、相談しやすくなり迅速な対応が可能となります。また、匿名相談も受け付けることで、プライバシーを保護し、報復を恐れることなく声をあげられるようにします。

信頼される相談窓口になるためには必ず相談対応研修を受講してください。
下記バナーの公開研修は社内研修として時間や内容をアレンジして行うことも可能です。

ハラスメントが起きた際は加害者と向き合うこと

ハラスメントの事実が確認された場合には、厳正な処分や再発防止策を行うことが必要です。
行為者に対する処分だけではなく、再発防止のための個人研修受講や被害者カウンセリングが含まれます。
適切に対応することは、組織全体に対しても『ハラスメント行為が許されない』というメッセージを強く発信し
抑止効果を高めます。
加害者が知り合いだからということで、甘い処分にした組織も過去にありましたが、そのようなことをすれば
社員からの信頼もなくなりますし、二次被害がどんどん広がります。

加害者(行為者)個人研修はセクハラの場合は2回ほど行います。
なぜ加害行為をしたのかを本人と講師で分析し、今後しないためにはどうしたら良いか学んでいただきます。

被害者カウンセリングは、その方の心身の状況によりクリニックを受診したり、社内の専門家に診てもらうことをお勧めします。

嫌なことは「困ります」と言える職場づくり

これは、パワハラ対策もメンタルヘルス対策も共通ですが、効果的な対策として、組織全体でのコミュニケーションの活性化があります。ハラスメントが発生しにくい職場環境を作るために、日常的なコミュニケーションを強化し、上司と部下の間に信頼関係を築くことが求められます。心理的安全性の高い職場であれば、意見も言いやすく相談もしやすいので問題が早期に発見され、迅速な対応が可能となります。

また、定期的な職場環境のチェックと改善も重要です。従業員アンケートを実施し、職場の雰囲気や問題点を把握することで、
具体的な改善策を講じることができます。これにより、職場全体の働きやすさが向上し、ハラスメントの予防に繋がります。

これらの取り組みを継続的に実施することで、セクシュアルハラスメントの防止対策の効果が高まり、健全な職場環境の構築が実現します。

 

まとめ

セクシュアルハラスメントは、個人の尊厳と企業の健全な発展を脅かす重大な問題です。調査データからも、その深刻さが浮き彫りになっています。組織は、被害者が声を上げやすい環境を整え、迅速かつ適切な対応を行うことで、健全な職場環境を築く責任があります。これを実現するためには、全従業員が一丸となって取り組むことが不可欠です。

次回のコラムでもハラスメントや心理的安全性、さらにはコミュニケーションに関するコラムをお伝えしていきます。

杉山修&柳原里枝子