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パワーハラスメント加害者の言い訳に対する対処法と更生方法【公認心理師解説】

パワハラは必ず防ぐことができます。

私は公認心理師であり、パワハラ対策検討会委員を務めております。
15年以上にわたり「行為者個人研修」にてパワハラ加害者となった方、あるいはそのリスクがある方々と向き合ってきました。
その経験から、「パワハラをしない・させない」ための具体的な方法をご提供することができます。

もし、パワハラ行為者に対する対応方法についてすぐにご相談されたい方は、下記バナーからお問い合わせください。

「行為者個人研修」は基本的に対面で行いますが、オンラインでも対応しております。

1.パワハラ加害者からの言い訳にどう対応するか

組織から「あなたは加害者と言われています」と告げられると、誰もがショックを受け、自己防衛反応として言い訳をしたくなります。
多くの加害行為者は、いじめを意図しておらず、指導や注意を通じて生産性を向上させたり、安全を確保しようと良かれと思って行動しているのです。そのため、自身の行動の理由を伝えることは決して悪いことではありません。
担当者としては、行為者からの事実確認を行う際、加害者を指導する際には、彼らの言い訳を遮らずに最後まで聞くことが重要です。

よくある言い訳と指導する際の対処法

1)安全を守るためには厳しくしなければならない実は、安全を守るために厳しい叱責を行うことは逆効果です。
人はストレス状態が続くと、脳の前頭葉の機能が低下することが医学的に実証されています。前頭葉の機能には集中力、情動コントロール、意思決定などが含まれ、これらの機能が低下するとミスや事故が起きやすくなります。

2)何度言ってもわからないから厳しくした→ご自身の経験に置き換えてみましょう。子どものころ、親から厳しく言われて改善できたことはあったでしょうか?たとえその場では恐怖心から従ったとしても、それが長続きすることは少なかったのではないでしょうか。
「やらされ感」で仕方なく行動したり、「なぜそれをするのか」という理由がわからないままでは、相手の成長につながりません。

3)思う通りに動かないので頭にきたあなたのやり方や価値観だけが本当にすべてでしょうか?成功体験があると保守的になり、「そのやり方でなければダメ!危険だ、上手くいかない」と考えがちです。
しかし、部下があなたと異なるやり方や考えを表現したときは、いきなり叱るのではなく、「なぜそのようなやり方をしているのか」を冷静に尋ねてみましょう。信じてチャレンジさせることも大切です。

今回は3つの事例をご紹介しました。
弊社の個人研修では、まず行為者の言い訳を聞いた上で、上記のようなポイントを説明し、どのように関わるべきかをアドバイスしています。
次に、更生のための具体的な方法についてお伝えします。

2.パワハラ加害者が更生するには事実を振り返る

被害者とされる方への関わり方を振り返りましょう。
相手からパワハラと受け取られた行動や発言が事実であれば、嘘をつかずに認めましょう。
ただし、事実とは異なる場合は、相談員などの担当者に冷静に説明しましょう。被害者とされる方が「被害を受けた」と主張しても、基本的には以下のパワハラの3つの要素をすべて満たさないとパワハラとはなりません。
また、組織から事実確認を求められた際には、誠実に対応し、協力することが求められます。協力を怠ると、「業務命令違反」として懲戒処分を受ける可能性があります。

 

職場のパワーハラスメントとは

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。厚生労働省(明るい職場応援団より引用)

3.パワハラ加害者が更生するには自分を振り返る

ご自身が変わるチャンスです。自身を振り返り改善するためには一人では難しいと思います。何らかの研修に参加する、身近な上司や人事担当者に相談して指導法やマネジメント法を学ぶ、カウンセリングを受ける、行為者個人研修に参加する等がお勧めです。

いつも一人で解決しようとしていた方は、誰かに相談して一人で抱え込まないでくださいね。

人はベテランほど自分の考え方ややり方が正しいと思いがちになりますので、周囲からの指摘に対して不満を持ったり、腹を立てたり、プライドが傷ついたりすると思います。しかし、「火のない所に煙は立たぬ」ということわざがあるようにご自身が加害者ではないと確信していたとしても、誤解されるような何か行動や発言が無意識にもあった可能性があります。

パワハラ加害者の特徴を知る

① コミュニケーションが一方通行(下記3の考えがベースにあるため)

②日頃周囲への承認をしない(あるいは気に入った人にしかしない)

③自分のやり方や価値観で凝り固まっている

④問題志向で問題点ばかりが目につく 

多くの加害者はこうした特徴があります。加害者の方は責任感が高く、組織に言われた目標を達成したいという思いや、部下や後輩に成長してほしい、良いサービスを提供したいという気持ちがあり、彼らにしてみればそのために厳しく指導しているのですが、上記①から④の状態で指導しても相手は人間ですから萎縮したり不満を抱えるだけなのです。

パワハラ加害者特徴に対する改善方法(上記の特徴に対する改善方法)

傾聴法を学ぶ

一方通行のコミュニケーションを防ぐには「聞き上手」になることです。傾聴法についてはまた別コラムでお伝えします。
一つだけ今ここに記すとすれば「待つ」ということを大切にしてください。遮らないようにしてください。

②承認トレーニングをする

ルールとしては「当たり前」はなし、「自分と比較しない」ことです。そして、日ごろから相手(チームメンバーなど)に関心をもち 
良い面(資源)を見るように意識します。
その際は少しでも良いところ、少しでもできたこと、少しでもうまくいったことを見ましょう。トレーニングとしては、例えばスケジュール表に欄をつくり、1日1回でもよいので承認できたら〇をつけるとか、メンバーの良いところを書き込むなどすると、2か月ぐらいでいちいち書かなくても自然に良い部分が飛び込んでくるように『見える世界』が変わります。

③価値観や考え方に対する許容範囲を広げる

下記の絵は何に見えますか?

同じ絵でも見え方が違うように人は同じ出来事でも受け止め方は異なります。ベテランの見える世界とそうではない方の見える世界も違うのです。成功体験があると「そのやり方でやらないと上手くいかない」と思い、他の人のやり方を受け入れられなかったり、「コツコツ努力すべき」と考えていると、そうではない人を見るとイライラしたり、人間ですからお互いにそういうことはありますが、加害者にならないためには是非、許容範囲を広げてください。「ドライバーテスト」を受けてみることや「認知療法」を取り入れることもお勧めです。

④解決志向による前向きな課題解決法を学ぶ


相手に対して出来ていないところについて「なぜできない」「なぜやらない」という問題点に焦点を当てて問い詰めると、人間には心がありますので「自己防衛反応」として逃走か闘争になるといわれています。

表現としては、無言になる・嘘をつく・言い訳をする・言い争う等。これでは指導している意味はないですね。悪循環になるだけです。
もともと競争心の強い方の場合は問題志向で「なんで」「なぜ」と責められるほうがやる気になるという方もいますが、私のこれまでの経験からすると少人数です。(あるパワハラ加害者の方は「なぜ」「なぜ」と追いつめられるほうがやる気になるとのことでした。)多くの方は萎縮したり、不快に思います。

人に対しては解決志向アプローチで指導をすると闘争や逃走とならず、前向きに受け止めてくれます。解決志向についてはまた別のコラムでご紹介します。こちらの書籍でもわかりやすく現場で実践できるように解説しております。

4. 研修などで学んだことをアウトプットして自分のスキルとする

「学ぶ」は「まねる」という言葉もあるように、研修参加や読書から学んだことはアウトプットを繰り返し行わないと身に付きませんよね。私も英会話を学びましたがアウトプット出来ていないので全く身につきません。(自慢にならないですね)加害者と言われた方はもともと努力家も多いのでその才能や資源を良い方向に活かしてください。
行為者個人研修」で私たち講師は「加害者の話や考えをまず受け止めて、一緒に振り返り、どうしたらパワハラとならない適切なかかわりができるかを一緒に検討していきます。」そして、次回お会いする大抵1か月後には実践してみて上手くいったことや困ったことをお聞きして、また検討を重ねてアウトプットしていただきます。

これにより、今までお会いした加害者と言われた方は全員が変化しております。○○ザップみたいなかんじでしょうか?しかし、○○と同じように時間がたてばもしかしたらリバウンドする可能性もあるかもしれません。そうならないためには、加害者と言われたあなたがダイエットと同じようにまずは自分自身のことも大事にしてほしいです。つまり、ストレスをためないこと、焦らないことでしょう。
困ったら相談するのも良い方法ですし、困っていなくても(自覚していなくても)時々、信頼できる方に話を聞いてもらうことも良いです。(コーチングやカウンセリングの利用など)

 

まとめ

加害者という呼び方をしてすみません。わかりやすくするためにそのように書かせていただきました。
私も含めて誰もが加害者になる可能性はあります。お互いに時に自分を振り返り、裸の王様にならないようにいたしましょう。

ハラスメント個人研修についてのコラムもございますので是非ご覧ください→コラム「個人研修で再発防止できます

株式会社ハートセラピー 代表 柳原里枝子

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