パワハラ加害者が「記憶がない」と主張するのはなぜ?心理メカニズムと再発を防ぐ個別研修のポイント
「証拠のメールや録音があるのに、本人は『全く覚えていない』と言い張る……」 ハラスメント事案の対応にあたる人事担当者様から、このような相談が増えています。
証拠を突きつけられてもなお記憶がないと主張されると、「嘘をついて逃げようとしているのではないか」「反省の色がない」と感じてしまうのが通常です。しかし、臨床心理士としての視点で見ると、これは単なる嘘ではなく、脳の防衛本能や衝動性の問題であるケースが少なくありません。
本コラムでは、加害者が「記憶を失う」心理的メカニズムと、そうした社員に対してどのような個別研修(行動変容アプローチ)を行うべきか、18年の実績を持つ専門家の視点で解説します。
目次
なぜ加害者は「記憶がない」のか?嘘ではない3つの心理的要因
「そんなことを言った/書いた覚えはない」 この言葉の裏には、実は以下のような心理・脳内現象が隠れていることが多いのです。
感情による「認知の狭窄」(情動ハイジャック)
カッとなった瞬間、脳の司令塔である前頭前野の機能が低下し、感情の中枢(扁桃体)が暴走します。この時、人の意識は「怒り」一点に集中し(トンネル視)、自分がどのような言葉を発したか、どのような行動をとったかという「エピソード記憶」が脳に定着しない現象が起こります。 特に、PC画面の操作など「反射的」に行った攻撃行動は、思考を介していないため、記憶に残りにくい傾向があります。
自己防衛のための「無意識の忘却」
「自分は熱心な指導者である」「善人である」という自己認識が強い人ほど、自分の加害行為を受け入れられません。 「部下に対して『死ね』などと言うはずがない」という思い込みが、都合の悪い事実を無意識に記憶から排除(解離)させてしまいます。これは自分自身の精神的安定を守るための、脳の防衛機制です。
行為の「自動化・習慣化」
普段から強い言葉を使ったり、脳内で他者を攻撃する言葉(インナーワード)を呟いたりしている場合、その行為は本人にとって「日常(ルーチン)」です。 私たちがいちいち「今日の歯磨きの手順」を鮮明に覚えていないのと同様に、常態化した攻撃行動は記憶として保存されにくいのです。

一般的な「コンプライアンス研修」が効かない理由
記憶がない加害者に対し、一般的な集合研修や、法律論を説く座学研修を行っても、効果は限定的です。
「覚えていないこと」は反省できない 「あの時の言動を振り返りましょう」と言っても、本人には記憶がないため、形式的な謝罪しか出てきません。
「知識」と「衝動」は別物 「パワハラは違法だ」と頭で理解していても、瞬間的なイライラ(PCトラブルや部下のミスなど)に対する反射的な攻撃衝動は抑えられません。
必要なのは、「反省」を迫ることではなく、「無意識の行動をコントロールする技術」を身につけさせることです。
記憶がない加害者に効く「心理学的アプローチ」の個別研修
弊社が提供するハラスメント行為者向け個別研修では、記憶の有無を問いただすのではなく、以下のステップで再発防止を図ります。
Step 1. 「記憶がない=危険な状態」という認知形成
「覚えていないなら仕方がない」ではなく、「記憶が飛ぶほど感情のコントロールを失っていた」という事実を直面化させます。 専門のカウンセラー講師が、「記憶がないことは非常にリスクが高い状態である」と心理学的に解説し、本人の危機感を醸成します。
Step 2. 「トリガー(引き金)」の特定
記憶がなくても、その前後に何があったかは分析可能です。 「急いでいる時にPCが固まった」「部下から予想外の反論があった」など、怒りのスイッチが入る「状況(トリガー)」を特定します。
Step 3. 物理的な「行動停止」トレーニング
思考が追いつかないスピードで暴言を吐いたり、メールを打ったりしてしまうタイプには、精神論ではなく物理的なブレーキを用意します。
怒りを感じたら6秒間、物理的にPCから手を離す。
送信ボタンを押す前に必ず深呼吸をする「アンカー(目印)」をデスクに貼る など、個人の特性に合わせた具体的な行動療法を指導します。

まとめ:難しい行為者対応は「心理の専門家」にお任せください
「記憶がない」と主張する行為者への対応は、社内の人事担当者様だけで抱え込むには荷が重すぎるケースが多々あります。 無理に自白させようとすれば関係が悪化し、放置すれば再発のリスクが高まります。
ハートセラピー株式会社は、18年にわたり、様々な企業のハラスメント問題解決を支援してまいりました。講師は全員、臨床心理士や産業カウンセラー等の資格を持つ「心の専門家」です。
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